読書の秋ということで、本日は最近読んで面白かった本のご紹介。百田尚樹著「影法師」
読んだ方もいるとは思いますが、百田尚樹といえば「永遠の0」や「海賊と呼ばれた男」の作者
名作ばかりです。「影法師」は武士の世界で立身出世を願い、日々剣術に励みながらも階級という
身分制度や武家社会の掟に阻まれながら、友と共に切磋琢磨し友の為にすべてを投げ捨てても
守るというもの。
冒頭、今や大出世を遂げ筆頭家老となった彰蔵(勘一)が、消息がわからなくなった竹馬の友で
あった彦四郎が悲運の死を遂げていたのを知るところから始まります。その謎が推理小説のように、
回想タッチで解き明かされていくという展開で話が流れていきます。読み始めはそうでもなかった
ですが、話の展開がスリリングでどんどん引き込まれていきます。構成も無駄なところがほとんどなく、
みごとにつながっていて素晴らしいです。身分の違う互いの才を認め合った二人の武士の友情が
テーマです。運命のいたずらで主人公である勘一は表舞台を歩き、大出世を遂げるが、学問も剣の腕も
上の秀才タイプの彦四郎は影のように生き、ひそかに死を迎えます。そしてその勘一の大出世は、
危機の時に一度ならず、ことごとく彦四郎に守られ、その犠牲があったためであることが明らかになって
いくなかでクライマックスを迎え、真相を知った彰蔵は愕然とし、自責の念にとらわれ号泣という
ところで話は終わります。正義感の強い二人で、特に彦四郎のように人はここまで自己を犠牲に
できるものなのか、考えさせられるその究極の姿が描かれています。
これからの秋の夜長にお勧めの1冊です!